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【癒ログ】ナパバレーの旅 自然界の妖精が宿るワイナリー

「Frog’s leap winery」フロッグスリープ ワイナリー

著書の取材でワインの名産地、ナパにある「フロッグスリープ」を訪れたのは5年前。そこに足を踏み入れた途端、空気中に光がキラキラ舞い輝いているのが見えました。ここは、草花や木々が生い茂り、昆虫、微生物、鳥などが生息する生態系がそのまま活かされたワイナリーです。ここで40年もの間、オーガニックワインを作り続けてきたオーナーで農家のジョンはとても穏やかな顔をしていました。彼が話す言葉の端々に優しさと誇らしさを感じたのは、この地球を愛し自然との調和を大切にする本物のオーガニック農家だったからでしょう。

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人間も人間以外の生物も気持ち良く共存する畑

オーガニックと言う言葉が一人走りしています。一般の定義は、農薬や化学肥料を使わず有機肥料によって生産された農産物の事ですが、最近では工業化されたオーガニックが市場に出回り、イメージアップの為にUSDA認証が利用されている傾向にあります。1980年に100%オーガニックワイン醸造を始めたジョンのゴールは、「商品を売る為の手段」ではなく、「人間と生物が気持ち良く共存する仕事」でした。当時のアメリカは大量生産、大量消費の時代。環境の事など考える人は少なかったのです。一方、ヒッピーの発祥の地、サンフランシスコの対岸にあるバークレーでは、1960年代に自然を愛するヒッピー達が有機農業を始め、70年代にはアリスウォータース氏が提唱した地産地消、オーガニックブームへと時代は流れていきました。その活動家の一人がジョンです。

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サステイナブル(持続可能な)農業

ジョンはワイン造りにサステイナブル(持続可能な)農法を取り入れました。これは土壌に生息する微生物や虫、雑草や鳥などそれぞれの役割を農業に生かし、本来の植物の形、味のオーガニック作物を育てます。専門的になってしまいますが、宇宙とつながる「バイオダイナミック農法」「ドライ農法」、「自然農法」もここで実践されています。ジョンは生態系には無駄なものがないと言います。それほど自然界の構成は巧妙にできているのです。「では何故全ての農家はこの農法を導入しないの」?と思う人もいるでしょう。それは、オーガニックワインを有機土壌から作り育て収穫を得るまでに手間暇がかかるからです。まだ沢山の農家は、雑草や虫を寄せ付けない農薬を使い人件費を抑え、生産量を増やし利益を得ています。そういう理由から、「フローッグスリープ」は人気なワイナリーにもかかわらず、生産量はこの10年間変化してないのです。

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生き甲斐ある仕事とライフスタイル

「サステイナブル農法」には生態系を守るだけではなく、人が生き甲斐を持って働く職場環境作りも含まれています。モノを作るのは人ですから、働く人がハッピーでなければ、美味しい作物も作れないというのがジョンの思想です。ここでは、良い土壌を作り人体(肌、特に手や足)に優しくあること。トラクターは騒音がしないよう従業員、隣人にもテレスを与えない、エネルギーはバイオ燃料を使い人と他の生物も汚れた排気を吸引しないように工夫しています。さらにモチベーションが上がるのは、この畑に植えられた多種のオーガニック野菜とハーブは全て彼らの生活の糧に役立てられているのです。従業員はいつもプリプリに育った旬のオーガニック野菜を食べています。なんて素敵な職場なんでしょう!

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「お金を追求すると心が貧乏になる。成功は今この瞬間なんだ」

2006年に建設されたファームハウスは、カリフォルニアのワイン産業で初めて「LEED」*1というグリーン建築認証を取得しています。自然乾燥した木材を使い、風通しが良く自然光を取り入れ、節電、省エネを図った建物で、そこから眺める美しいガーデンがまるで一枚の絵のようです。このような取り組みにお金もかかるのでは?という私の質問にジョンは笑って答えました。「自然と向き合う農家である限り、お金儲けをしようとする必要は全くないんだよ。全ては自然が私たちに最も必要なものを教えてくれ、その持続性の法則を実践すれば必ず還元があり、人生が満ちたりたものになるんだ」。私この言葉に少し戸惑いました。日本のバブル世代を生きた私にとって、「お金がないからできない」「お金や役職があれば幸せになれる」という植え付けられた「資本主義」や「利己主義」が頭の隅にあったのです。そんな世の中に屈服したくないと日本を離れ、「自分らしく生きる」術を身につけたつもりでしたが、まだまだ修行途中です。ジョンは「自分らしい生き方」を実践を持って証明してくれるメントア(師匠)です。「成功は結果ではない。この場所が気持良いと思える瞬間、人の笑顔に癒される瞬間、美味しいワインの飲む瞬間、これらは全て成功なのさ」。今、私がオーガニックライフを生き、そんなライフスタイルを日本に紹介する生き甲斐のある仕事をしているのも、彼の影響が大きいのです。

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美しいエネルギーが流れるワイナリーに居るだけで満ち足りた気持ちになります。木陰でロッキングチェアーに身を投じてビオワインを飲むのが最高のひと時です。

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*1「Leadership in Energy and Environmental design」の略。

環境や社会に優しく、人間が健康的に暮らせる建築法。

フレンドリーなワンちゃんはいつもまったりお昼寝

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この記事の担当ライター
関根絵里
関根絵里

ELLI SEKINE 関根絵里 

「Food&Lifestyle」ライター、メディアコーディネーター

グルメ、ライフスタイルを中心に各雑誌のコラムや雑誌の特集記事、サンフランシスコのガイドブック(6冊)に執筆中。 著書に『カリフォルニア.オーガニックトリップ』(ダイヤモンド社2014)がある。執筆の傍、食、レストラン、オーガニック視察、メディアコーディネート、オーガニック個人ガイドを務める。1999年よりサンフランシスコ在住。

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