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夏の終わりの無気力感、寂寥感…「セプテンバーブルー(9月の憂鬱)」を感じたら?

8月の夏休み、みなさんはどのように過ごされましたか?

まだ暑さが残り、夏の余韻を感じる月ではありますが、9月は“祭りのあと”という表現の如く、真夏のイベントの人の熱気や歓声が消えたあとの、何とも言えないさみしさを感じるものです。

アメリカでは5月病の代わりに夏休み明けの「セプテンバーブルー(憂鬱な9月)」、冬休み明けの「ジャニュアリーブルー(憂鬱な1月)」と呼ばれる症状があり、家族や友人と過ごした後の日常の生活に戻るときに憂鬱になることが多いそうです。

英語で「Blue(青)」は憂鬱な精神状態を表す言葉です。

ちなみに、アメリカに5月病という概念がないのは、日本の社会のように新入社員が4月に揃って入社するようなシステムがないから、とのことです。海外ドラマや映画にも、入社式のようなシーンは観たことがありませんね。

やる気が出ない、気分がふさぐ…誰にでも起こりうる「セプテンバーブルー」

アメリカと言えば昨年、Mさんが筆者のもとに遠方からカウンセリングにいらっしゃったのもこの時期でした。

Mさんは夏休みにアメリカ旅行を楽しんで来たとのことでしたが、

「…私は旅行が趣味なのですが、旅行から帰ってくる時にいつもネガティブな気分なんです…。今回も帰りの飛行機で落ち込んでしまって、数日後の出社が憂鬱でした。仕事をやめようかとさえ、思ってしまうんです。私の人生って、何なのだろうって最近はモヤモヤと悩んでしまって…」

残暑が残る9月のカウンセリングルームで、一年前にMさんは、ゆっくりと言葉を選びながら話してくださいました。

「そのネガティブな気分の中にはどのような気持ちが含まれていますか?」

筆者の問いかけにMさんが答えました。

「そうですね…いくつかありますが…“さみしい”気分だと思います…」

このように、ひとつの塊を小さく細かく分けていくことを、筆者の仕事の一つであるNLP(神経言語プログラミング)では「チャンクダウン」と言います。

例えばケーキを食べたときに視覚、味覚、嗅覚から観察してみると、お砂糖、生クリーム、卵、苺、小麦粉、バターなどが使われていることがわかります。

チャンクダウンは、物事を分析していくために効果的な方法なので、自分の感情を分析する際にもとても役に立ちます。

セプテンバーブルーはどんな人にも引き起こる憂鬱な気分。

そんなときは今まで気付かずにいたマイナスの感情がどこからともなく現れてきます。

憂鬱な気分は、小さな悩みや小さな迷いを浮上させるので、Mさんのケースのように、水面下に潜んでいたものに気づいてしまうきっかけになりやすいのです。

満月の翌日にためらうようにやってくる「十六夜(いざよい)」

さて、このように憂鬱になりがちな9月ですが、夏の終わりから秋口にかけては、月が美しく見える時期でもあります。

この季節に満月を眺める習わしは、暑さがひと段落し、涼しい夜長を楽しむ意味があるのと、空気が澄んできて月が綺麗に見えるから、と言われていますが、東南アジアの仏教国では今でも満月の日に祭りや反省の儀式を行います。

満月は1年に12回訪れますが、中でも秋の十五夜の月見が盛んになったのは平安時代からで、貴族の間に広まりました。

庶民も広く十五夜を楽しむようになったのは、江戸時代に入ってからです。
この季節は稲が育ち、間もなく収穫が始まる時期。無事に収穫できる喜びを分かち合い、感謝する日でもありました。

そんな十五夜ですが、その翌日に「十六夜(いざよい)」があります。
2019年の十五夜の翌日の十六夜は9月14日です。

「いざよい」は躊躇う(ためらう)という意味の「いざよう」という動詞が名詞になったもので、「あれこれ迷って決心がつかない」という意味があります。

満ちた翌日の月のためらいのように悩みや迷いが現れてしまうのは、旅行から帰ってくるときのMさんの状態と似ています。

また、十六夜は日本独自の暦の見方ですが、満ち足りたあとの物足りなさから生まれる憂鬱は、アメリカのセプテンバーブルーとも共通しています。

カウンセリングでは後半に、今一度Mさんに尋ねてみました。

「Mさんは旅行をすることで何を得ているのでしょうか?」

それに対する答えは次のような言葉でした。

「旅行していると、自由を感じます。自分を変えたくても変える勇気がなかったのですが、旅に出れば気分が一時的に“変わり”ます。

私は、自分を変えたい気持ちを長いこと、水面下に放って現実逃避をしていた気がします……」

そしてカウンセリングの結果、現状を変えるために実家を離れてMさんは一人暮らしを始めることを決心しました。

次の海外旅行の費用を一人暮らしの資金に充てることにして、しばらく海外旅行は保留です。

落ち込んで転職を考えていたMさんですが、彼女の課題は旅行や転職ではなかったのです。

こんなふうにカウンセリングでは、実際に悩んでいたこととは別のテーマを発見していくことが、解決のきっかけになる場合があります。

そんなMさんですが、あれから一人暮らしも一年が過ぎました。
今は旅行したい気持ちが不思議と消え失せたそうです。

自分を観察する「トリップ」のすすめ

大辞林によると、古来の日本では「旅」は“住居を離れること”全般を指していたそうです。

英語の“travel(トラベル)”は、ラテン語とフランス語を経由した“trouble(トラブル)”が語源と言われているそうです。

昔の旅は苦労の連続だったからという理由のようです。

また、ちょっとそこまで出掛けるという意味では“trip(トリップ)”が小さな旅のニュアンスとして使われるようです。

日本の平安時代には、十五夜に貴族が船に乗って、酒を酌み交わして月を愛でていました。このとき空にある月を眺めるのではなく、水面や盃の酒に映った月を鑑賞したとのこと。

水面に映る月を貴族が愛でたように、私たちは、自分の水面下に課題が潜んでいるときに、自分を観察する小さな旅に出たくなるのかもしれません。

9月は月も人もためらう月。
夜になったら外でコーヒーでも飲んでみませんか?
そんなときはぜひ、蓋付き紙カップではなくマグカップをおすすめします。
コーヒーの映り込む、揺れて戸惑う月を眺めながら、中秋の名月鑑賞にしばし“トリップ”してみましょう。

この記事の担当ライター
ふくち みずほ
ふくち みずほ

【セラピスト・カウンセラー・ヒューマンアカデミー講師】

全国30校舎のヒューマンアカデミーにて、セラピスト・カウンセラーの講座開発と育成授業を手がける。米国NLP協会認定NLPトレーナー。得意分野はインナーチャイルド、カラーセラピー、育成歴をもとにした交流分析、ヒプノセラピー、NLPトレーニング。
女性が生きる上で必要な、セラピースキル(知識)とテクニック(技術)は、恋愛、仕事、結婚、育児など活用分野が膨大であるため、多くの女性にその技術を提供する。NLPトレーニングでの受講生数は延べ1460人にのぼる。

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