暑さでイライラ…をクールダウン。ヒントは「ジャパニーズホラー」にあり?
半年前のある日、こんなご相談をいただきました。
「資格試験を受験する予定なのですが…迷っています…」
筆者は実践心理トレーニングの授業の合間に、セラピーやカウンセリングで、仕事の悩み、恋愛の悩み、他にも多種多様の困りごとに耳を傾けています。
暑さでイライラしてしまう人は、意外と多い?
暗い表情で話し出す相談者に「◯◯さんを引き止めているものは、何でしょうか?」と尋ねてみました。
すると相談者は少し迷って、
「それは…試験日が半年後の8月だからです。暑いと私、イライラしちゃうんです。そのうえ、夏は疲れやすくて集中力が保てないんです…」
それを聞いて筆者は「わかります!」と思わず同調してしまいました。
カウンセリングでは、カウンセラーは自分の意見を述べないで、相談者の意見を引き出していく形式をとりますが、相談者と同じく夏が苦手な筆者は、思わず大きくうなずいてしまいました。
相談者が取得したい資格試験は毎年8月に実施されていて、合格したいけれど自信がないとのことです。
昔に比べて夏が暑く感じるのはなぜ?
昔の日本は、もっと涼しかったように感じるのですが、気象庁の過去のデータで50年前から昨年の東京の平均気温を調べてみたら、なんと50年間で平均約1℃しか上昇していませんでした。
ちなみに1967年8月の東京の平均気温は28.0℃でしたが、2017年の8月の東京の平均気温は26.4℃です。
なのに、昔より夏が暑く感じるのはなぜでしょうか。複数の回答をピックアップすることで、見えてくるものがあります。そこで、何人かにその理由を考えてもらいました。
すると、50年前に比べて
- エアコンの快適さに慣れてしまったから
- 昔より人が移動する機会が増えたから
- ストレスを感じる人が増えたから
主にこのような意見が出揃いました。あなたはどの意見に賛同しますか?
暑くてイライラするのは、からだの自然な反応?
夏は脳内物質のセロトニン(心を安定させるはたらきがあるホルモン)が暑さで欠乏しやすく、「イライラする」という状態に陥りやすいそうです。
イライラから怒りっぽくなり、セロトニンがもたらす冷静な判断を失わせてしまいます。
また、夏は汗をたくさんかきます。汗が蒸発することで皮膚は冷却されますが、これを行うために心拍数や新陳代謝率(体が機能するうえで必要なカロリーの量)が上がってしまい、やがて疲れて眠くなって体がだるく感じるのです。
夏はこんな風に、セロトニンが欠乏し、発汗で疲れるので、ヘトヘトになってしまうのですね。
冒頭の相談者が真夏の試験を恐れる理由も、このような科学的な要因から生まれているのですから、気合いや努力だけでは太刀打ちできないかもしれません。
怪談、ジャパニーズホラーの3つの「ひんやり」要素で夏を乗り切ろう
大昔から、人はいろいろな知恵を絞って真夏の暑さを乗り越えてきました。
たとえば、江戸時代には団扇と金魚が庶民の間で広まりました。団扇は風を起こし、水を泳ぐ金魚は見ているだけで涼し気です。
清少納言の「枕草子」には、平安時代には氷室から運ばれてきた氷を削って、ツタの樹液から作り出す甘汁をかけて食すことを「あてなるもの(上品なもの)」として描かれています。また、江戸時代には将軍への献上品として、早飛脚で雪国から氷を運んでいます。
このように、庶民はもちろん、貴族や将軍も夏の涼しさに価値を感じていたのです。
そしてもう一つ、江戸時代から流行して現代に至るものがあります。
それは、怪談(ゴーストストーリー)です。
今ならホラー映画で上映されるかもしれませんが、江戸時代は100話語り終えると何かが起きるとブームになった怪談会「百物語」が流行しました。
背筋が凍る怖いお話は、ヒヤッとします。
有名なものは、「番町皿屋敷」「四谷怪談」など、いずれも幽霊を描いています。
真夏にはお盆の催事があり、亡くなった人の霊が帰って来るとされています。
そんななか、霊とお盆を重ね合わせて、夏の時期に歌舞伎で演じたことも、夏に怪談話しをするようになったきっかけのようです。
また、日本のホラー映画はジャパニーズホラーとも呼ばれており、ゾンビが襲ってくる海外のホラー映画よりも“じっとり、ひんやりする怖さがある”と言われています。
さて、この記事を読んでくださっているあなたは、怖いお話はお好きですか?
いくら涼しくなるからといって、怖いのは嫌い!というかたももちろんいらっしゃるでしょう。
暑いのも不快ですが、怖くて不気味なのも不快です。
では、怪談やジャパニーズホラーのどんな要素が、人に冷気を感じさせるのでしょうか?
夏を涼しくするために、その要素を取り入れる応用も考えてみました。
怖さを演出する3つの“イメージ法”
1 語り口がゆっくり
怪談もジャパニーズホラーも、ゆっくりとストーリーが進みます。特に何気ない日常に潜む恐怖は、怖さが倍増します。
【応用編】
動作をゆっくりにする。話す時も普段よりゆっくりを心がけると、体の動きも緩やかになり、汗をかきにくくなります。急いで動くことは、余計に暑さを感じます。
2 水っぽい場面が多い
怪談もジャパニーズホラーも、じっとり濡れている場面や、水辺や雨のシーンが多いので冷たい感覚を引き起こさせます。
【応用編】
水気のあるもの(ミニサイズの保冷剤やウェットタオル、氷が入ったドリンク)を手に持つと、指の末端神経が冷たさを感じます。
3 薄暗い
怪談もジャパニーズホラーも、陽がさんさんと照り付ける明るい場面より、ほの暗いシーンに恐怖を感じて背筋が寒くなります。
【応用編】
屋外では色のついたサングラスをかけて紫外線を避けましょう。視界を薄暗くすることで温度を錯覚させます。
このように上記の3つを応用してみることを冒頭の相談者に提案しました。
半年前からこの方法でのトレーニングを始めて、暑さがピークに達する今月がいよいよ受験日です。
普段からゆっくりと会話をするようにし、そして試験会場に向かう電車のなかでは、ハンカチに包んだ保冷剤を手に持ち、試験会場まではサングラスをかけるように手はずは整っています。
試験日当日には、相談者がクールダウンしてイライラせず、疲れもなくベストを尽くすことを願います。
ですが、最もヒヤッとするのは?
まさしくそれは、試験会場についてから気づく
“受験票の忘れ物”…。
これはホラーより怖いと思いませんか?


ふくち みずほ
【リフレーミングカラーズ協会株式会社代表、セラピスト・カウンセラー・ヒューマンアカデミー講師】
全国30校舎のヒューマンアカデミーにて、セラピスト・カウンセラーの講座開発と育成授業を手がける。米国NLP協会認定NLPトレーナー。得意分野はインナーチャイルド、カラーセラピー、育成歴をもとにした交流分析、ヒプノセラピー、NLPトレーニング。
女性が生きる上で必要な、セラピースキル(知識)とテクニック(技術)は、恋愛、仕事、結婚、育児など活用分野が膨大であるため、多くの女性にその技術を提供する。NLPトレーニングでの受講生数は延べ1460人にのぼる。