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ストレスでお腹が痛い…過敏性腸症候群(IBS)の不安をやわらげる「切り札」

冬の足音が近づいてきました。肌寒さが増すこれからの季節、お腹の不調を感じやすくなる方がいらっしゃるかもしれません。

からだの冷えが便秘などのお腹の不調を招くことをご存じの方は多いかもしれませんが、実は腸のコンディションには、メンタルも密接にかかわっています。
今回は、ストレスなどが原因とされるお腹の不調とその対処法をご紹介します。

過敏性腸症候群(IBS)ってどんな病気?

ストレス状態が続くと、心はもちろん、からだにもさまざまな不調があらわれます。そのひとつが過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome の頭文字をとりIBSと称される。以下IBSと表記)です。

痛みや不快感、下痢、便秘などいつもと違うお腹の不調が数ヵ月以上続いているけれど、検査しても明らかな異常はみつからない場合などに、IBSがうたがわれます。

原因としては、ストレスによって消化管のはたらきが悪くなることで起こる「ストレス説」や、腸管に加わったわずかな刺激を敏感に「痛み」として感じてしまう「内臓知覚過敏説」などが考えられています。

下痢や便秘などはそれだけでつらいものですが、よりやっかいなのは、「予期不安」や「広場恐怖」といった心の不調も併発しやすいことにあります。

例えば、電車の中で急にお腹が痛くなったとします。トイレに駆け込んでスッキリし、「今日はたまたまそうなったんだ」と思えればさほど心配はいりません。
けれど、そんなできごとをきっかけに、「次に電車に乗るときにまたお腹が痛くなったらどうしよう…」と、必要以上に不安になる心理状態に陥ることがあります。これが、予期不安です。
その不安がストレスとなり、腹痛や急な便意を引き起こす悪循環に陥るケースが、実は少なくありません。

さらにそんな経験が続くと、今度は「電車に乗ること」自体が怖くなってしまいます。このような心の状態を広場恐怖と呼びます。

IBSには、どんな人がなりやすい?

では、どんな人がIBSになりやすいのでしょうか。
一般的には、周囲に合わせようとしすぎて無理をしてしまう人や、几帳面な人、内向的で自己主張がしづらい人、ひとりでくよくよ悩むことが多い人などに多い傾向があります。
つまり、こちらの記事(https://healingplaza.jp/archive/12042/#top)にもある「ストレス状態に陥りやすいタイプ」の人は要注意。些細なことをきっかけに、お腹の不調が慢性化するケースがあるということです。

ちなみに、日本人の有病率は、ごく軽いものまで含めると全人口の約20%。世代では、20〜40歳代に多いとされています。

「またお腹が痛くなるかも…」の不安をやわらげる「切り札」を用意しよう

日本人の5人にひとりがIBSの可能性があるわけですが、病院などを訪れる人はそのうちの約20%です。
おそらく、電車での通勤や外出がためらわれるなど、日常生活に差し障るようになってからようやく受診する人が多いのでしょう。

電車にかぎらず、大切なプレゼンや商談、出張の前など、決まったシーンでお腹が痛くなることが多いなら、専門医へ相談してみましょう。まずは内科や消化器科で検査し、はっきりとした原因が見当たらなければ心療内科を受診する方法もあります。

ストレスからくる病いの場合、症状に対する治療と同時に、心へのアプローチで根っこにある原因となっているストレスに対する対処も行っていくことが大切です。
心へのアプローチでは、専門医やカウンセラーによって、カウンセリングやリラクセーション法のひとつである自律訓練法の指導などが行われます。ストレス対処法や自律訓練法を身につけ、不安・緊張をしやすい場面であっても、症状が出ないよう心とからだの不安・緊張を軽減できるようにしていきます。

日々の生活では、暴飲暴食を避け、脂肪分の多い食事や乳製品を摂りすぎないようにしたり、食べるとお腹の調子が悪くなるとわかっているものは避けるようにしたりしましょう。また、規則正しい生活こそストレスに負けない心と身体づくりの基本です。睡眠や食事の時間を一定にし、毎朝トイレに行く習慣をつけましょう。

そして、もし「またお腹が痛くなったらどうしよう…」と不安になりそうなときには、「そういえば、不安な気持ちでいると余計症状があらわれやすくなるんだったな」と思い出してみてください。心と身体の関係という事実に目を向け、自分を客観視することで、不安から少し気持ちをそらせます。

また、お腹が痛くなりそうなシーンに備え、いくつかの切り札を用意しておくのもいいでしょう。
例えば、整腸剤、リラックスできるような音楽、お気に入りの動画など、「これがあれば、いざというときでも安心」「気がまぎれる」と思うものならなんでもかまいません。電車に乗るとお腹が痛くなるなら、途中の駅にある清潔で使いやすいトイレをいくつかチェックしておくのもいいかもしれません。
「もしもお腹が痛くなっても対処法を用意している」と思えることが、不安の緩和につながります。

いろいろなことを試してみて、「今回はお腹が痛くならなかった」という成功体験ができればしめたものです。焦らなくても大丈夫。専門医やカウンセラーのサポートも受けながら、自分のペースで心とからだを健やかにしていきたいですね。

この記事の担当ライター
桃谷 裕子
桃谷 裕子

桃谷裕子(ももたに・ひろこ)
横浜労災病院 勤務者メンタルヘルスセンター 臨床心理士
東京薬科大学卒業後、薬剤師の免許取得。関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)の薬剤師や英国ピアソングループ医療系出版社の管理職、エムスリー(株)にて日本最大級の医療従事者専用サイト『m3.com』の初代コンテンツ・リーダーとして働き続ける中、「いい仕事をするためには“心”と“からだ”の両方の健康づくりが重要!」と痛感。一念発起して、子育てをしながら心理学を学び、駒澤大学大学院、筑波大学大学院を修了。いまでは“薬女”の知識と経験も活かしながら臨床心理士・産業カウンセラーとして働く。現職のほか、神奈川大学教職員のカウンセラー、陸上自衛隊や企業のメンタルヘルス研修講師も務める。(公財)日本生産性本部と東京大学が共同で設立した『健康いきいき職場づくりフォーラム』の2018年2月のブログ記事を担当。著書に『メンタルサポート教室』『心とからだの健康教室』(新興医学出版社)がある。リラクシング&リフレッシング・ミュージック『ストレスフリー』(デラ)の監修者でもある。

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