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ストレスが減り、人間関係も円滑に!
「アサーティブな私」になるためのヒント

職場の仲間や友人との会話中、本当はみんなとは違う意見を持っているけれど、なんとなく言い出しづらくてそのまま話を合わせたり、本心ではやりたくない無茶なお願いごとでも、相手に嫌われたくなくて引き受けたり。
社会生活を営んでいれば、きっと誰もが経験していることでしょう。

では、そういうものだと思って過ごしていくしかないのかというと、そんなことはありません。
自分の素直な考えや気持ちを伝えつつも、相手とより良い信頼関係を続けられる方法があるのです。

「アサーティブ」って、なんのこと?

「アサーション(assertion)」という言葉をご存じですか?
最近ではビジネスシーンなどで使われることが増えたので、なんとなく耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

assertionを辞書で引くと「断言」「主張」と訳されますが、これには「自分も相手も大切にした自己表現」という意味が含まれています。

この世に全く同じ人間が存在しないように、人はそれぞれ性格も考え方も、感じ方も異なります。
そんな異なる部分があることを良いとし、お互いに尊重し合うことが「アサーティブ」です。
金子みすゞさんの有名な詩の一説、「みんなちがって みんないい」はまさにアサーティブな考え方です。

そして、「みんな」には自分も含まれます。
面倒ごとを頼まれて断りたい自分も、認めてあげていいのです。自分も相手も肯定し、尊重し合えるようなマインドを持つことで、心が整い、ストレスとも上手に付き合えるようになってくるのです。

あなたはどのタイプ?自己表現のタイプをセルフチェックしよう

さて、自己表現のタイプには前述した「アサーティブ」を含めて、「ノン・アサーティブ(非主張的)」「アグレッシブ(攻撃的)」の3つがあります。
ここで質問です。以下の上司の発言に対し、あなたの回答に近いものはどれですか?

上司:君がやったこの翻訳はひどいな。

回答A:何が悪くて、どう直せばよいか教えていただけますか。
回答B:そんなにひどいですか。申し訳ありません…。
回答C:そんなにひどいと思うなら、自分でやってください。

Aはアサーティブ、Bはノン・アサーティブ、 Cはアグレッシブな自己表現の例です。それぞれのタイプについてみていきましょう。

<アサーティブなタイプ>

自分の考えや気持ちをなるべく率直に正直に、その場にふさわしい方法で表現すると同時に、相手も同じように表現できるように気遣う、自分も相手も大切にできるタイプです。

お互い率直に話をするということは、考え方が食い違ったり、葛藤も起こるものです。
そんなときでも、お互いの意見を出し合い、聞き合い、譲ったり譲られたりしながら、どちらも納得のいく解決策を見つけ、お互いがwin-winの関係を目指すのがアサーティブな人です。

<ノン・アサーティブなタイプ>

相手に合わせようとし、自分の考えや気持ちは抑えることが多い非主張的なタイプで、日本人に多いといわれています。

一見、従順で素直なよい人の印象を持たれやすいですが、我慢するシーンが多いだけにストレスを抱えがち。
怒りや恨みといった感情もたまり、ときには相手にはっきり言わずにムッとした顔をしたり、嫌味っぽい言い方をして遠回しに攻撃することもあります。
また、自分より立場が弱い人に八つ当たりしたり、突然キレたりするケースも。

<アグレッシブなタイプ>

相手のことをあまり考えず、自分の考えや気持ちを一方的に主張するタイプです。
自分の思い通りにしたい、相手より優位に立ちたいといった願望がある人に多い傾向があります。

ハキハキしていて、迷いもないように見える一方で、実はどこか防衛的で、強がっていることも。
また、アグレッシブなタイプは人との衝突が多いので、他者との対等で親密な関係をつくりにくく、孤立しやすい面があります。

先の質問でBと回答したからといって、「私はノン・アサーティブなんだ」と決めつけなくても大丈夫です。
上司にはノン・アサーティブでも、家族や友人にはアサーティブになれる方もいらっしゃるでしょう。
このように、私たちは誰もがこの3つの側面を持ち合わせていて、相手によって自己表現の方法が異なるのもよくあることです。

もし、自分の言葉や行動を思い返したときに、全般的にノン・アサーティブになる場面が多い、あるいはアグレッシブになる傾向が強いと思われた方は、色々なシーンで発言する前に、「この発言をアサーティブに置き換えるとどうなるかな?」と考えてみる習慣をつけられるといいですね。

アサーティブな自分になれる3つのマインド

では、どうしたらアサーティブな自分に近づけるのでしょう。
そのヒントとして、日々意識したい3つのマインドをご紹介します。

1)相手のよいところをほめる

まずは、「相手のよいところに気づいたらほめる」ことから始めましょう。
これは、アサーションの基本ともいわれています。
人は、ほめられると自信がつくものです。そして、そんな経験をした人は、他の人をほめるようになるというポジティブな循環が生まれます。

ただし、思ってもいないことを形だけほめるのは逆効果です。
心がこもっていない言葉は相手にも伝わりやすく、かえって不信感や警戒感を持たれることもあるからです。本当に「いいな」「素敵だな」と思ったときに、その気持ちを素直に伝えましょう。

また、自分がほめられたときは、謙遜せずに笑顔で「ありがとう」「うれしいな!」と返していきましょう。

2)「自分も相手もOK」の考え方を持つ

自分のミスは正当化するのに、部下のミスはとことん非難する上司がいるとします。
このような、自分に甘く他人に厳しい人は、きっと誰からみてもあまり好ましくないと感じるでしょう。
では、逆はどうでしょう。部下のミスには「誰にでもあることだよね」と寛容でいられるのに、自分がミスをすると自己嫌悪に陥ってしまう。他人に甘く自分に厳しい人格者、と感じるかもしれませんが、実は自己否定感を持っていることが多く、ストレスがたまりやすい面もあります。

理想は、「自分も相手もOK」の考え方を持つことです。
自分を好きになって、信じてあげること。自分を信じられると「相手もOK」と感じられるようになってきます。

3)相手の話にじっくり耳を傾ける

自分を理解してほしいときは、相手のことも理解しようとする姿勢が大切です。
そのためには相手の話をじっくり聞くことが欠かせませんが、私たちは意識しないうちに、相手の話を自分の価値観でとらえたり、都合のいいように解釈したりといった「自分フィルター」を通して聞いていることが案外あります。

話を聞くときは、相手に関心を持って、相手の価値観を鑑みることを意識してみましょう。
話を積極的に聞いてくれる姿勢が伝わると、相手も「自分をわかろうとしてくれている」と感じられ、よりよい関係の構築につながります。

自分のことを伝えたいのに相手がずっと話しているときは、途中で遮らずに最後までじっくり聞いてあげましょう。そうすると、今度は相手が聞く耳を持ってくれるようになります。

自分を主張し、主体的に行動できる=アサーティブになるにつれ、ストレスが減少し、自尊心が高まることが、さまざまな研究からわかっています。
また、アサーティブでいることは人とのよりよいコミュニケーションにもつながります。
ご紹介した3つのマインドをご参考に、どうぞ、アサーティブな自分を目指してくださいね。

この記事の担当ライター
桃谷 裕子
桃谷 裕子

桃谷裕子(ももたに・ひろこ)
横浜労災病院 勤務者メンタルヘルスセンター 臨床心理士
東京薬科大学卒業後、薬剤師の免許取得。関東逓信病院(現・NTT東日本関東病院)の薬剤師や英国ピアソングループ医療系出版社の管理職、エムスリー(株)にて日本最大級の医療従事者専用サイト『m3.com』の初代コンテンツ・リーダーとして働き続ける中、「いい仕事をするためには“心”と“からだ”の両方の健康づくりが重要!」と痛感。一念発起して、子育てをしながら心理学を学び、駒澤大学大学院、筑波大学大学院を修了。いまでは“薬女”の知識と経験も活かしながら臨床心理士・産業カウンセラーとして働く。現職のほか、神奈川大学教職員のカウンセラー、陸上自衛隊や企業のメンタルヘルス研修講師も務める。(公財)日本生産性本部と東京大学が共同で設立した『健康いきいき職場づくりフォーラム』の2018年2月のブログ記事を担当。著書に『メンタルサポート教室』『心とからだの健康教室』(新興医学出版社)がある。リラクシング&リフレッシング・ミュージック『ストレスフリー』(デラ)の監修者でもある。

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